昭和50年頃から、瓦工事業界は、急速に瓦施工技能者と現場作業労務者の手不足と高齢化に、その施策の必要を痛感し、大阪府瓦商工業協同組合では、役員会に議案として提案審議されることになり、その結果、瓦葺職業訓練校の設立が可決されました。
関係官庁のご支援により、昭和53年3月認可を得ました。指導員として、組合役員8名が指導員免許を取得し、指導に当たることになりました。
以来、各事業所において中堅技能士として活躍しています。その中には、グランプリに挑戦できる優秀なものも数名おり、着々とその成果が上って来ております。
次に、訓練の槻要や、教科指導内容について申述べます。
一 目的
かわらぶき技能者を志す者に、基礎的な建築知識及び技能を段階的に修得させ、技能を通じて社会に役立つ人間の形成を目的とする。
一 入校資格
大阪府瓦商工業協同組合の組合員並びに、組合員の子弟・従業員で、高等学校卒業又は、それと同等以上の学力を有すると認めた者。
一 特典
修了時の技能照査に合格したものは、技能士補の称号が与えられ、修了後1年の実務経験を経て、2級技能士検定試験には学科試験が免除される。
一 費用
入校金3万円、授業料12万円(年額)、教科書及び実技工具.作業服等2万5千円。
一 訓練期間
養成訓練1年間1,572時間。
一 訓練教科
建築概論22時間、生産概論32時間、建築構造60時間、建築計画16時間、建築設備24時間、建築法規24時間、屋根24時間、材料28時間、安全衛生24時間、安全衛生作業法16時間、施工法52時間、仕様積算48時間、製図48時間、基本実技134時間、応用実技(事業所内訓練)1,020時間以上。
一 訓練設備
大阪市中央区上本町西1丁目2番14号(第3松屋ビル7F)大阪府瓦商工業協同組合会議室を学料教室に使用、パソコン・製図器・ビデオ其の他教材設置。
基本実技の訓練は、大阪府摂津市鳥飼中2-9-25 近畿ルーフ(株)倉庫にて実施。
一 指導員
建築構造は、1級建築士の役員が担当、その他は役員で分担、仕様積算の中にパソコンの講習等を加え、屋根・施工法はビデオによる視聴覚教材等で指導の徹底を期す。
基本実技は、1級技能士(指導員免許取得者)の役員が担当、基礎訓練を充分に行い、理論的に解説を加え、創造性・協調性・勤労意欲を持たせることに心配りする。
その他機器類の操作も同時に指導、安全講習会・施工講習会も参加させる。
今後の訓練についての抱負は、従来の瓦工事業界は、粘土かわらを主として訓練を行ってきましたが、現在の屋根材の市場は材質や形態が益々多様化し、建築様式も大きく変ぼうし、それに対応できる技能工が要求されるようになってきました。
因に、粘土かわらの需要比率をみましても45%を割り、需要拡大に懸命の筆力をしておりますが、大した回復の期待は望めそうでありません。
一部には社寺関係の建物で高度な技街を遺憾なく発揮し、粘土かわらのすばらしさを表現させていますが、業界の安定受注には繋がっておらないようです。
そこで、訓練校として時代の変化に対応していくため、新屋根材の施工にも取組む姿勢が必要ではないかと判断し、新屋根材の中でも安定需要で定着している材料から、施工指導を始めたいと思っています。
訓練時間数の関係もあり、材質の知識や施工実習等、熟練した講師をお願いするようにしたいと思っております。
メーカーさんの講習会など大いに利用させて頂く心算でおります。
粘土かわらの施工はすべての屋根材施工の基本でございますので、本末転倒にならぬよう、奥の深い粘土かわらの指導研究は怠ることのない様にして行きたいと思っております。
私達工事業の仕事は、まことに地味な上に可成の体力が必要です。機動化も遅れております。若年の人集めは至難でございますが、是が非でも解決して行かねばならない問題であります。
昔のような徒弟制度では駄目です。本腰を入れ本格的に時間をかけた指導体系の下に、技能指導のみならず人間教育を本筋とし、優れた技能土となるための基礎的知識を再教育しながら進めて行くような形の訓練校が必要ではないかと思っております。
その実現のために、現在の入校資格を広げて、一般からの応募も考慮してみるべきかと思っております。
以上の状態からの趨勢を判断致しますと、建築業界の一翼を担う工事業界として、誠に責任の重大さを認識し、業界一丸となって発展向上を目指したいと存じますので、宜しくご指導御支援を御願い申し上げます。